鮎(あゆ)を知る | 魚菜 基

鮎(あゆ)を知る

清流の恵み「鮎」──日本の夏を味わう

日本の夏の味覚といえば、やはり「鮎(あゆ)」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。透き通るような清流にしか棲まない鮎は、その美しい姿や繊細な香りから、「清流の女王」や「香魚(こうぎょ)」とも呼ばれ、古くから多くの人々に親しまれてきました。

儚くも美しい「年魚」の一生

鮎はサケの仲間で、日本各地の川に生息しています。春に稚魚が海から川へ遡上し、夏には成魚となって川を泳ぎ、秋に産卵して一生を終えるという、いわゆる「年魚(ねんぎょ)」です。このように、1年で生涯を終える鮎は、儚くも美しい日本の四季を象徴する存在としても知られています。

鮎の魅力は“香り”にあり

鮎の特徴といえば、まずはその香りです。きゅうりやスイカのような青々しい香りをもち、焼いたときの芳ばしさと合わさって、まさに夏の香りが広がります。香りの強さは鮎が育った環境によって異なり、天然の鮎は特に香り高く、ファンの間では一種のステータスともなっています。

代表的な料理「鮎の塩焼き」

料理としての鮎もまた、日本料理を語る上で欠かせません。もっともポピュラーなのは「鮎の塩焼き」です。串を打ち、じっくりと炭火で焼き上げると、皮はパリッと香ばしく、身はしっとりと柔らかく焼きあがります。頭から尻尾、そして内臓まで丸ごといただけるのも鮎の魅力です。特に内臓のほろ苦さは、日本酒と相性抜群で、「通」の味わいとされています。

郷土に根ざす鮎料理のバリエーション

その他にも、「鮎の甘露煮」や「鮎の一夜干し」、「鮎飯」など、地域によって様々な食べ方が伝えられています。鮎を味噌で煮込んだ郷土料理や、素焼きした鮎を出汁にした鮎うどんなどもあり、それぞれの土地ならではの味わい方が楽しめます。

鵜飼に見る、日本の伝統的な鮎漁

また、鮎漁も日本の夏を彩る伝統のひとつです。特に岐阜県・長良川などで行われている「鵜飼(うかい)」は、鵜という水鳥を使って鮎を獲る古来の漁法で、観光としても人気があります。夜の川面に篝火がゆらめき、鵜匠が巧みに鵜を操る様子は、まるで平安の時代にタイムスリップしたかのような幻想的な風景です。

減少する天然鮎と、養殖の取り組み

しかし近年では、河川の環境変化や水質の悪化により、天然の鮎は年々その数を減らしています。それにともない、多くの地域で放流や養殖も進められています。養殖技術の進歩によって、天然に近い味わいの鮎も増えており、より多くの人にそのおいしさを届ける努力が続けられています。

命の巡りとともに味わう、夏のひととき

季節はめぐり、川の水がぬるみ始めると、鮎は再び川を遡上します。その生命の力強さとともに、儚さも感じさせてくれる鮎は、まさに日本人の感性に響く特別な存在です。夏のひとときを、自然の恵みとともに味わってみてはいかがでしょうか。

鮎料理を味わう、当店のこだわり

私たちの店でも、季節ごとに旬の素材を活かした料理をご提供していますが、夏の間はこの「鮎」を使った料理を楽しみにしてくださるお客様がとても多くいらっしゃいます。鮎はシンプルに塩焼きで召し上がっていただくのはもちろん、季節の野菜と組み合わせたり、ひと手間かけた創作料理としても提供しております。
皆さまのご来店を心よりお待ちしております。

この読み物を書いた人

魚菜 基  料理長

松岡 雄太

1985年生まれ、埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。3児の父。15歳の時に地元の鮨屋でアルバイトを始めたことから和食に惹かれ、日本料理の世界へ入り鮨・割烹・懐石の修行を積む。リッツカールトンシンガポールの老舗「白石」などを経て、令和元年に魚菜 基の店主となる。コロナ自粛期間中にソムリエ資格を取得したほどのワイン好き。

魚菜 基のご紹介

店舗

さいたま市・浦和駅にある和食・割烹店の魚菜 基では、「和」の本来の楽しみ方を追求し、四季折々の新鮮な旬の味覚をつかった懐石料理をお楽しみいただけます。市場に足を運び仕入れた季節の素材を、もっともふさわしい調理方法で。滋味深く、身も心も温まる贅沢な味わいの逸品を、大切な人や仲間とゆっくりと語らいながらしみじみと味わう、そんな思い出に残る特別なひと時をご提供致します。

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