筍(たけのこ)を知る

春の味覚「筍」、その魅力と楽しみ方

春の訪れとともに、私たちの食卓に季節感を届けてくれる食材のひとつが「筍(たけのこ)」です。そのほのかな香りとシャキシャキとした食感は、多くの人に春の味覚として親しまれてきました。今回は、筍の特徴や種類、産地、さらにはちょっとした小話を交えながら、その魅力をたっぷりお伝えします。

筍(たけのこ)とは?

筍は、竹の若芽を指します。「筍」という漢字が「竹の旬」と書くのは、筍が土の中から芽を出す頃が最も美味しい旬の時期であることに由来します。この短い期間に掘り取られた筍は、柔らかく、甘みが強いのが特徴です。筍の魅力は、なんといってもその独特な食感と風味。調理方法によって異なる顔を見せてくれるので、煮物や天ぷら、筍ご飯、さらには炒め物など、どんな料理にもよく合います。その万能さが筍の愛される理由のひとつと言えるでしょう。

筍にまつわる小話

筍には「一夜筍(いちやたけのこ)」という言葉があります。これは「筍が一晩で驚くほど成長する」ということから、物事が急激に進展する様子を表す比喩として使われます。また、筍はその成長の速さから「生命力の象徴」とされ、縁起物としても親しまれてきました。竹や筍はお正月の門松にも使われるなど、日本文化に深く根付いています。

筍の種類

筍にはいくつか種類があり、それぞれ風味や食感が異なります。種類を知ることで、さらに筍を楽しめるはずです。

孟宗竹(もうそうちく)

日本で最もポピュラーな筍です。春先(3〜4月)に収穫され、太くずっしりとした見た目が特徴。柔らかく、甘みが強いので、筍ご飯や煮物に最適です。


真竹(またけ)

孟宗竹の収穫が終わる頃、5〜6月に旬を迎えるのが真竹です。孟宗竹に比べると細身で繊維質が多く、シャキシャキ感が強め。炒め物や味噌汁の具材としてよく使われます。


淡竹(はちく)

初夏(6〜7月)に旬を迎える淡竹は、えぐみが少なく、淡い味わいが特徴。お吸い物や和え物など、筍本来の風味を楽しむシンプルな料理に向いています。


筍の名産地と地域の個性

筍の名産地として最も有名なのは、やはり京都です。中でも「洛西(らくさい)」地域の筍はブランド筍として知られています。この地域の筍は土壌の水はけが良いため、柔らかく甘みが濃厚。京都の料亭でも多く使われています。
他にも、鹿児島や静岡、福岡といった温暖な地域でも良質な筍が収穫されます。収穫時期や味わいには地域ごとの個性があるため、産地を意識して選ぶのも楽しみ方のひとつです。

筍の栄養価と健康効果

筍は低カロリーで、食物繊維が豊富な健康食材です。食物繊維は腸内環境を整え、便秘の改善に効果があります。また、筍に含まれるカリウムは、体内の余分な塩分を排出し、高血圧の予防に役立つと言われています。
さらに、筍には「チロシン」というアミノ酸が多く含まれており、これは脳の神経伝達物質の材料となります。集中力を高めたり、ストレスを和らげる効果が期待できるため、現代人にぴったりの食材とも言えるでしょう。

筍を調理する際に|下茹でのポイント

新鮮な筍を手に入れたら、まず行いたいのが「下茹で」です。この工程を省いてしまうと、筍特有のえぐみが残り、美味しさが半減してしまいます。お店で調理をする際にも下茹では丁寧に行っています。

下茹での
ポイント

01.筍の皮を2〜3枚剥き、穂先を斜めにカットします。

02.縦に1本浅い切れ目を入れると、茹でた後に皮が剥きやすくなります。

03.大きめの鍋に筍を入れ、たっぷりの水、米ぬか(または米のとぎ汁)、唐辛子1本を加えて茹でます。

04.筍や使用する鍋の大きさにもよりますが、40-60分ほど、竹串がスッと通るくらい柔らかくなったら火を止め、鍋の中でそのまま冷まします。

茹でた筍は、煮物や炊き込みご飯、炒め物、さらには天ぷらなど、さまざまな料理に活用できます。シンプルに薄くスライスして刺身風に食べるのもおすすめです。

筍を知る|まとめ

筍は、短い旬の間だけ楽しめる特別な食材です。その独特の食感と香り、そして栄養価の高さから、多くの人に愛されています。調理の手間は少しかかるかもしれませんが、その手間をかける価値がある美味しさが筍には詰まっています。春の味覚として、旬の筍をぜひ楽しんでみてください。自然の恵みに感謝しながら、筍料理で季節を感じる贅沢なひとときをお過ごしください。

この読み物を書いた人

魚菜 基  料理長

松岡 雄太

1985年生まれ、埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。3児の父。15歳の時に地元の鮨屋でアルバイトを始めたことから和食に惹かれ、日本料理の世界へ入り鮨・割烹・懐石の修行を積む。リッツカールトンシンガポールの老舗「白石」などを経て、令和元年に魚菜 基の店主となる。2022年5月より、【浦和 惜景(せっけい)】の料理長も兼任。コロナ自粛期間中にソムリエ資格を取得したほどのワイン好き。

魚菜 基のご紹介

店舗

さいたま市・浦和駅にある和食・割烹店の魚菜 基では、「和」の本来の楽しみ方を追求し、四季折々の新鮮な旬の味覚をつかった懐石料理をお楽しみいただけます。市場に足を運び仕入れた季節の素材を、もっともふさわしい調理方法で。滋味深く、身も心も温まる贅沢な味わいの逸品を、大切な人や仲間とゆっくりと語らいながらしみじみと味わう、そんな思い出に残る特別なひと時をご提供致します。

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